IH予選三回戦、青葉城西高校との対戦がフルセット勝負となった烏野高校。
15-15で青城が一回目のタイムアウトをとったところから8巻は始まります。
マネージャーの清水を手伝い、レギュラーメンバーにタオルを配る一年生・山口忠。
しんどいだろうな…
でも
いいな…!
レギュラーから外れた三年生セッター・菅原の視点はこれまでもありましたが、元々レギュラーだった選手と、そうではない選手とではやはり感覚が違います。
新たな視点から試合が描かれる『ハイキュー!!』第8巻の感想です。
山口、ピンチサーバーデビュー
実は7巻から山口の揺れる感情は少しずつ描かれていました。
たとえばこちら、空白のページに古舘先生が描いてくれるイラストです。

<古舘春一『ハイキュー!!』第7巻 集英社>
頭を冷やすために菅原と交代した影山の表情を、隣でそっと盗み見る彼。
同学年の影山が今の今までコート上を走り回っていたこと、下げられて悔しそうなことを目の当たりにして、きっと次元のちがいを痛感させられていると思うんです。
同じ部活やチームに所属していても、試合に出るのが当たり前の人ととそうではない人とでは、別世界なのが現実で。
それを突き付けられるこういう瞬間って、けっこう生々しい場面だなと思います。
さてそんな山口、実は少し前から烏野OB・嶋田の元に、ジャンプフローターサーブの練習に通っています。
まだ習得したとはとても言い難い現状ですが、17-19と青城にリードされた烏野は、何とか流れを変えたい場面。
鳥養コーチがほとんど思いつきのような状態で山口を投入します。
ガチガチに緊張する彼。
これまでコートの外にしかいなかった人間が、初めてその内側に入る瞬間です。

<古舘春一『ハイキュー!!』第8巻・P32 集英社>
サイドラインを跨いだ山口の
こっち側は気温が違うみたいだ…!
というモノローグ、とてもリアルにコートの中と外を表している。
でもやっぱり烏野の二・三年生は優しいです。
コートの中から外から、彼のプレッシャーを軽減させようと声を掛けます。
自分も戦える!
そう証明したかった山口ですが、無情にも打ったボールは白帯に当たって自陣コートに…。
これで青城を20点台に乗せてしまった山口は、肩身の狭さにひたすら謝りまくります。
すぐさまコートから出ることになった彼に、主将の大地が一言。
次 決めろよ
確かにこんな時、「ドンマイ」とか「気にするな」とかいう慰めの言葉は届かない。
“次”という大地の言葉を聞いた山口はこの表情。

<古舘春一『ハイキュー!!』第8巻・P42 集英社>
山口の気持ちが痛いほど解るチームメイトの気持ちも引き締まります。
この第64話、タイトルが「流れを変える一本」なんですね。
で、結果として流れは変わったんだけど、それは山口本人や監督の理想通りの変わり方ではなかった。
ただこの流れの変わり方ってすごく背後に意味がある。
なぜならこういう空気になったのは、きっと山口が素直ないい子だから。
一年生で一人だけ試合に出られないことに腐らず、自らOBの元にジャンプフローターを習いに通っているのを知っているから。
そして苦しい場面で出てミスしてしまった辛さを、責任感を、ちゃんと慮れる先輩たちだから。
と、色んな要素が組み合わさったからこそ変わった空気なのだと思います。
フルセットの試合も終盤で、みんな体力的にも精神的にも苦しい時だけど、人のミスをカバーするためなら力を振り絞れるっていい。
本当に、これが「チーム」ということ、チームとしての強さだと思います。
少なくとも影山が3年だった時の北川第一中にはなかったものですよね。
「常にガムシャラなことが=本気なのかよ」
さて試合はその後、24-24と烏野が追い付き、デュースにもつれこみます。
誰もが体力的にしんどいファイナルセットの終盤、目立ち始めたのが青城のライト・国見英の活躍。
国見は金田一同様、影山と同じ強豪・北川第一中学の出身です。
合理的なスタイルの国見は、影山からすると時に手を抜いているように見えるプレーヤー。
中学時代の影山は業を煮やして、「なんで本気でやんないんだよ」と詰め寄ったことが回想シーンで描かれます。
その時の国見の返事が
常にガムシャラなことがイコール”本気”なのかよ
そう、彼は彼なりにちゃんと本気なのです。
無駄な体力を消費しないスタイルだからこそ、他が疲れた終盤にも人並み以上に働けるんですね。
今、敵チームのコートで球に食らいつく国見を見て
国見も あんな風に必死になって球(ボール)追うのか
さらに25点を越えてからスパイクを決めまくる国見に、影山は驚きを隠せません。
そして

<古舘春一『ハイキュー!!』第8巻・P104 集英社>
―3年間一緒のチームメイトだった
けど試合中に
普通に笑う国見を今日初めて見た
自分は非難するしかできなかった選手を上手く使っている青城セッター・及川徹に敗北感を感じ、どう太刀打ちしたらいいか分からなくなってしまいます。
最後の攻撃も及川に読まれ、日向がドシャットをくらって試合終了。
試合に負けるのはもちろんですが、かつて自分とは異なるプレースタイルにイライラしていた国見が、敵チームでイキイキと躍動しているのを見て突き付けられた気付き。
影山にとってはこれが最も心に突き刺さっただろうと思います。
けれどもこの烏野に入り、この試合を通して人との信頼関係を学んだ影山が、またいつか国見と同じチームでプレーするのを見てみたい。
そう思いませんか?
烏野、IH予選3回戦敗退
こうして3回戦で敗退した烏野高校。
以前から古舘さんの敗れたチームの描き方が素晴らしいことを力説してきましたが、主役の高校が負けたのをどう描写するのでしょうか?
この日、鳥養コーチが部員たちをまとめて食事に連れて行きます。
筋肉に負荷がかかれば筋繊維が切れる
試合後の今なんか筋繊維ブッチブチだそれを飯食って修復する
そうやって筋肉がつく
そうやって強くなる
だから食え
ちゃんとした飯をな
それを聴いてみんな、悔しくて悔しくて泣きながら、でも一生懸命食べるこのシーン。

<古舘春一『ハイキュー!!』第8巻・P147 集英社>
これ、本当に食べること自体も大切なんですが、コーチが言っているのはきっとそれだけではなく。
ボロボロの身体を食べて修復することは、ズタズタの心を修復することにつがなる。
試合結果を受け入れて、悔しさも認めて、でも下を向くな、進め―そんなメッセージだと思うし、選手たちもきっと解っているから必死に食べているんだろうなと。
悔しさを乗り越えるためのいいシーンだと思います。
さて通常3年生はIH予選で負けたら引退ですが、春高が3月開催になり3年生が出場できるようになってからは、チームによって事情が変わってきます。
最初から春高出場を目指しているチームは続けるだろうし、公立の進学校なら引退するのが一般的です。
じゃあ、烏野の3年トリオはどうするのか?
レギュラーではない菅原は教師に「部活を続けてお前にメリットがあるとは思えない」と言われますが、こう返します。
…先生 俺
メリットがあるからバレーやってるんじゃないんです
この言葉、響いた方も多のではないでしょうか?
結局3人プラス、マネージャーの清水も含めてみんな残留を決意。
このチームで春高を目指すことになったところで8巻は終了です。
色んな選手の色んな心の動きが強く感じられる8巻でした。
そして9巻では再び東京合宿へ…!
あのメンバーたちと再会するのがたのしみですね!!