『ハイキュー!!』6巻レビュー「背中と横顔に泣く&巧い試合描写」

インターハイ予選・伊達工業戦の途中から始まる『ハイキュー!!』第6巻。

これまで登場した青葉城西音駒も魅力的なチームでしたが、伊達工もまた全く違ったチームカラーですごくいい!

6巻の表紙は影山と及川ですが、裏表紙には「伊達の鉄壁」と書かれた横断幕を持つ伊達工業の面々の絵が。

まるで写真のような構図で、みんな笑顔。

これまでの31巻の中でも抜群に好きな裏表紙です。

ただ「これ、いつ撮ったんだろう?」と思うとちょっと切ない。

とにかく伊達工業が大好きになる6巻です!

伊達工業というチームとその魅力

高校時代を振り返ると、工業高校のチームには共通点があったと思う。

男子校じゃないのに「ザ・男子校!」という感じの、濃ゆい圧がにじみ出ていました。

伊達工にもその男くさい雰囲気はあって、“鉄壁のブロック”が売りの迫力あるバレーを展開するチーム。

しかも生意気な2年生に手を焼いている3年生、という構図が面白い。

鉄壁の要・無口で重厚感たっぷりの(でもスピードは速い)青根と、軽口で先輩にちょっかいを出すレフトの二口

対して「いかにも工業高校!」オーラの鎌先笹谷センパイ。

そんなチームをまとめる主将&セッターの茂庭さんは温厚で優しくて。

(ここまで出した名前がすべて宮城県の温泉地の名前で、仙台に住んでいた私はすごくノスタルジーを感じる…!)

主人公の日向にいまいち魅力を感じていない私は、むしろ伊達工を応援しながら読んでしまいました。

でも烏野は伊達工をストレートで破ります。

伊達工業高校 IH予選 2回戦敗退

の文字に「いやー!いやだー!」と抗いたい気持ちに…。

この時の茂庭主将の眼を閉じた表情に、小さなコマだけど泣けてしまいました。

部活の終わりは無情です…

烏野高校が主役ですからね、あくまで勝利者目線で物語は進むのですが、前回も書いたように、敗れたチームを駒として切り捨てないのが作者・古舘春一さんの好きなところ。

青根茂庭さんにズンズン詰め寄って一言、「春高!!!」とだけ叫ぶシーンがあるんです。

3年生に引退してほしくない、一緒に春高までプレーしたいという思い、無口でほとんど喋らない青根が発するからこそグッとくる台詞。

それに対して茂庭主将は引退を宣言し、こう言います。

俺達3年の代は”ハズレ”だって言われてたんだ
不作だって

それがお前達のおかげで”鉄壁”の名に恥じないチームでいられた

だから

お前達が3年の時は春高まで残れ
今から新しいチームで体制整えて
今年の予選で勝てなくても来年…

青葉城西も白鳥沢も烏野も!
全部押さえつけて全国行け!!

いいな!!

そして5ページ後、空いたページに描かれたこのイラストに、涙腺が崩壊してしまいました。

<古舘春一『ハイキュー!!』第6巻・P66 集英社>

色んな思いが詰まってるし、3年生三人の悔しさがすごく伝わってくる。

いい背中を描きますなあ…。

しかも巻末に番外編まで用意してくれていて。

2年生にはああ言ったのものの、悔しくてまだ引退したくない3年生三人。

部室で本音をもらす三人の声を、偶然青根二口が聞いてしまいます。

それを聴いて背筋を伸ばす2年生の二人。

茂庭さんって本当に、なんていい主将なんだろう…!

その物語読みたい!

伊達工が茂庭先輩の言葉を実現する物語が読みたいよー!!

と心から思いました。

インハイ予選2日目・青葉城西戦スタート!

さてこうしてインハイ予選2日目に進み、青葉城西高校と対戦する烏野高校。

1セット目中盤に差し掛かると、レフトの田中が青城のキャプテン・及川にスパイクサーブで狙われ崩されます。

しかも打ったスパイクはドシャットをくらい、メンタルに大いに響く場面(実際、バレーの試合で一番精神的にきつく、いたたまれなくなる場面)。

ところで私はなぜ田中を好きかって、この人がただ元気のある”いいヤツ”なわけじゃないから。

自分の能力や弱さと真正面から向き合っているからなんですよね。

ミスしたことじゃなく(そもそもミスというより相手の好プレー)、ミスしてトスを呼ばなかった心の弱さをその場で認められること。

いつも田中に励まされている日向は、自分も何か言葉をかけようとしますが、田中は自分の頬に自ら両手ビンタをくらわしてこの表情。

<古舘春一『ハイキュー!!』第5巻・P159 集英社>

ふつうだったら崩れてしまいそうなところで自ら立ち上がり上を向ける田中の強さは30巻でも描かれていて、私はぼろぼろ泣きながら読みましたが。

ちょっと気持ちが弱っている時に6巻を開くと、このページでもグッときてしまいます。

影山が一番学ぶことが多いのって、この人からじゃないのかな。

その天才セッター影山が調子を崩され、3年の菅原と交代するところで6巻は終了。

素晴らしい臨場感!古舘先生のバレーボール描写

いつもならここで記事も終了なのですが。

この巻(だけじゃないけど)、ほんっとうに試合の描き方が素晴らしいので、最後にちょっとだけご紹介。

まずはラリーが続いて苦しい場面で、エースのが何度も助走に入るところ。

<古舘春一『ハイキュー!!』第6巻・P49 集英社>

テレビでバレーを見ているとボールを目で追ってしまうので意外かもしれませんが、バレーは試合中、足を止めることがほとんどありません。

この場面ではがすでに2本のスパイクをブロックに跳ね返されていて、3本目を打つための助走に入るところです。

3本打つということは、が自分に言い聞かせているように“すぐ戻る”ことが必要で。

全力でジャンプして打った後に再び助走するために”戻る”のは、本当に体力を奪うんですよね。

その脚への負担・苦しさと、それに勝とうとする強い気持ち、そしてスピード感が詰まったページだと思います。

そしてもう一つ、伊達工との試合がまさに終わらんとするシーン。

の打ったスパイクが伊達工ブロックの手を弾き、そのボールがネットの白帯上に当たって落ちるところ。

<古舘春一『ハイキュー!!』第6巻・P54 集英社>

無心に追いかける二口、これがマッチポイントなのに間に合わないと悟る二口。

ブロッカーの手を弾いたボールが落ちるまでの間と、そのほんの短い時間に頭をよぎること、落ちるボールに対する「待ってくれ」という心情…

それらが音のないこの3コマに凝縮されているなと感じました。

切ない…!

古舘さんのバレーの描き方は、経験者にとっては胸に迫るものがあるし、未経験者にはそんな距離を感じさせない臨場感にあふれているなあと思います。

いつかこのトピックだけで一記事書ければ。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

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