『ハイキュー!!』12巻レビュー「向上心を持って考え、やり続ける」

東京での遠征合宿を経て、ついに春高の第一次予選が始まる『ハイキュー!!』12巻

表紙にもレギュラーメンバーが勢ぞろいです。

全国を狙うようなチームを主役に置いた時、難しいのはいわゆる弱小校との戦いをどう描くかだろうと思います。

青葉城西伊達工業のように追いつめられて”いい試合”になることのない、言ってみればラクに勝てる相手との試合。

弱いチームだからと言ってやる気がないとは限らないし、経験ある監督不在などのもどかしさを抱えた学校もあるし、実は強くないチームほど事情は様々です。

うちの中学・高校は全国を狙える位置にはなかったものの、それでも実力差があり過ぎてサクッと終わってしまう試合はあり、そういう相手は印象に残っていません。

そんなチームとの対戦を古舘先生はどう”読ませる”のか?

それでは、『ハイキュー!!』12巻の感想ブログです。

後悔という原動力維持の難しさ

私は個人的に、弱いチームで続けることというのは、強いチームで続けることよりも難しいことだと感じます。

それはモチベーションを高く保てないから。

もちろん「1勝」や「初戦突破」だって立派な目標です。

でも、そのために一丸となって全力を尽くせる高校は、そんなに多くないのが現実だと思います。

烏野の初戦、対戦相手は扇南高校

ちょっと柄の悪い公立高校で、「こんな雰囲気の学校あったなあ」というリアルさがあります。

扇南はIH予選の序盤で王者・白鳥沢に大敗を屈しており、「どうせまた負ける」という諦めが染みついている。

試合は旭のノータッチ・サービスエースで始まり、いきなり扇南を黙らせます。

また月島が黒尾のアドバイス通りのブロックでどシャットを決めるなど、烏野は夏合宿の成果を順調に見せていきます。

またも格上チームとの対戦に、あっさり第1セットを取られる扇南。

しかし、IH予選後に引退した3年の”アッキー君主将”の一言で、新キャプテンでもある2年生エースの十和田は

弱え事悟ったフリしてカッコばっか気にすんのも
いい加減みっともねえよなあ

と気付くんです。

ここに気付けるかどうかって、実は中学や高校生活の充実度をガラッと変えるほど大きい。

うすうす気づいていても、「本気出して負ける」=「弱い」を認めることになるから、わざと冷めてるフリしている男子って少なくない(こういうのはなぜか女子より男子に多い)。

だけどそこを認めてからが本当の成長の始まりなんですよね。

烏野を倒す!!一次予選突破!!妥当白鳥沢!!!

と熱く叫ぶ十和田に

<古舘春一『ハイキュー!!』第12巻・P45 集英社>

受けて立アーつ!!

と応じる田中の格好よさよ。

私は「本気には本気」が礼儀だと思っているので、田中のこういうところがほんと大好きですね。

でも、ふだんの練習の成果を突き付けられるのが公式試合。

烏野にマッチポイントを握られた十和田は

…毎回どたん場に追いつめられてから
練習不足を後悔すんだよなあ

と実感します。

…まあ俺達まだ2年だし
来年にもチャンスはあるしな

<古舘春一『ハイキュー!!』第12巻・P54 集英社>

ってなるから弱いままなんだろうがボゲがアアアアア!!!

うう、本質っていつも痛い。

でも全開でこれを思える高校生は尊いよ。

いかにも漫画のメインからは遠いキャラの十和田ですが、この人の心の動きにグッときた人は多いんじゃないかな、と思います。

しかし最後に根性を見せて繋いだボールも、格の違いを見せつけられるように決められ、セットカウント2-0で烏野、初戦突破。

試合後、十和田たちは引退した3年の元主将に言われます。

―今 悔しいのは当然だからな

(中略)

でも その悔しさ
3日で忘れる奴は弱いままだからな…!!

この回、第101話のタイトルが『後悔と原動力』なのですが…これを維持できるかどうかは、特に学生にとっては環境が大きい。

あと、負けを忘れないこともしんどい。

ここへ来て、『ハイキュー!!』10巻の山口の名台詞が思い出されます。

ところで扇南の強面エース・十和田。

最近の悩みが「弟が兄離れしつつある気がする」ってかわいいですね…。

圧倒的な高さとの戦い方

さて烏野高校、3回戦では201cmの百沢擁する角川高校と対戦します。

最初は苦戦するものの、マイナス・テンポの速攻やファースト・テンポのシンクロ攻撃、磨いてきた守備などでこれをストレートで撃破。

百沢はバレーが決して高さや空中戦だけじゃない、単純なスポーツではないことを学びます。

この試合を観戦に来た鳥養元監督が、バレーをする上で「低さ」について話す言葉です。

不利なのは確か
だが戦い方は必ずある
(中略)
それでも”考える事”には必ず価値があると思ってるよ

日本代表も、世界レベルで見たら本当に小さいです。

でも浅野博亮選手がWSとして選出されているように、技術が優れていれば戦えます。

ただもちろん、同じ技術・同じ能力なら背の高いほうが圧倒的に有利なわけで…

でも、“考える事”をやめなければ打開策が見えることもある。

私はセッターだったせいもあるでしょうが、バレーってめちゃくちゃ頭を使うスポーツだと思っていて。

150cm代の私もバレー部としては小柄で、だからこそ考えることも多く。

102話のタイトルでもある『シンプルで純粋な力』には敵わないことも多いのですが、それを発揮させないことや欺くこと、守りのテクニックで対抗することなどにこそバレーの面白味があると信じています。

まとめ

うちの学校は監督が厳しく内容の濃い練習ができていたから、敗退した時は皆泣きこそすれ、そんなに悔いは残っていません。

扇南戦を読んで、実はそれは幸運なことなのではないかと思いました。

でも2コ上の先輩方の代にはバレー経験のある監督がおらず、試行錯誤しながら練習していたし、ダレる時もありました。

きっとあの代の先輩の中には「やり切った」と思えない人もいるはず。

部活は多少キツくても、ちゃんと強くなれる練習をさせてもらえて、いい試合ができた私たちは恵まれていたんだなと思います。

それにしても、月島がどんどん積極的になっていくのがいいですね~。

コーチに自分から相談に行ったり、兄の所属する社会人チームに練習に行ったり、音駒の黒尾から学んだり。

登場人物で一番向上心に変化を見せるのは月島で、やっぱり上を目指すことは素直に格好いいと思います。

自分を変えていけるのって本当にカッコいいこと。

常に向上心を持って考え続けること―地味かもしれないけど、その尊さが伝わる12巻でした。

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