『ハイキュー!!』10巻レビュー「なぜ、何のため人は頑張るのか」

ザ・夏!ですね。

こちらも夏休み合宿中心の『ハイキュー!!』10巻は、タイトルが「月の出」であることからも分かるように、ツッキーこと月島蛍にスポットが当たります。

10巻のこの表紙、かっこいいですよね。

でもこの巻で本当にカッコいいのは、彼の小学生からの友だち・山口忠の成長と勇気です。

それでは、後半に熱い見どころが待っている10巻の感想ブログです。

それぞれの課題と向き合う夏

「今のままじゃダメだ」―そう各自が思い知り、それぞれが新たな課題に取り組み始める10巻の冒頭。

今までは影山の神業トス頼みで成立していた”変人速攻”も、日向がやり方を変えたいと主張し、影山は及川に、日向は鳥養元監督(”じじい”の方)に教えを乞います。

また旭はジャンプサーブ強化、
山口は引き続きジャンフロの習得、
菅原たちはシンクロ攻撃、
西谷は苦手なトス。

と、それぞれ新しい技術の習得のため自主練に励みますが、月島だけは自主性を見せません。

与えられた練習はこなすものの、今ひとつやる気が感じられない月島に、周囲はもどかしさを感じます。

そんな月島を上手く刺激するのが東京の強豪校・梟谷の木兎と音駒の黒尾、両主将。

部活が終わっても居残り練習に励む彼らに、スパイク練するからブロックに跳んでくれと言われ、スルーを決めようとする月島ですが…

君MBならも少しブロック練習した方が良いんじゃない?

と煽られ、練習に参加。

こういう煽り方する黒尾さん、好きだなあ。

ムカッときた月島はしぶしぶ参加するも、同じMBの黒尾にブロック技術の差を見せつけられることになります。

それでも火がつかない月島は、必死に努力するチームメイトを横目に

たかが部活だろ
なんでそんな風にやるんだ
そんな風にやるからあとで苦しくなるんだろ

と、努力が報われず悔し泣きする兄の姿を思い出すのです。

中学ではエースで自慢だった兄。

烏野高校でもエースだと信じていたが、嘘だったことが判明する…

というこのエピソードは「ただのブラコンやん」という感じで、弟よりむしろ兄のほうが辛かったと思うのですが、「合格点はとっても100点は目指さない」月島のスタイルに大いに影響があったことが窺えます。

そこで動くのが山口忠!

小学生の時いじめられていた山口を、いじっめこ達への

「……カッコ悪」

のたった一言で救った月島。

それ以来いつも「ツッキー」「ツッキー」と慕い、まるで腰巾着のようだった山口でしたが、最近の月島には思うところがあるようで、象徴的なのがこのシーン。

<古舘春一『ハイキュー!!』第10巻・P129 集英社>

裏山ダッシュについて来れなくなった月島を心配して立ち止まるも、「―先行っていいよ、大丈夫だから!」と言われ、

じゃあ…行ってる

と山口が走り去る。

何でもスマートにこなしてまるでヒーローだった月島を、山口がこんな風に”置いて”いくのは初めてだったろうと思います。

精神的には山口のほうが成長していることを表すコマですね。

でも、月島のカッコ良さを知っている山口だからこそ、それで良しとは思えないんです。

その日の練習終了後、意を決した山口が走ります。

ヅッギイィイイィ!!!(ツッキー!!!)

<古舘春一『ハイキュー!!』第10巻・P160 集英社>

…最近のツッキーはカッコ悪いよ!!!

(中略)

どうして「こっから先は無理」って線引いちゃうんだよ!?

食ってかかる山口に驚く月島ですが、どんなに頑張っても上には上がいて、

絶対に”1番”になんかなれない
どこかで負ける

それをわかってるのに皆どんな原動力で動いているんだよ!?

と疑問をぶつけます。

そして問われた山口の答えは。

<古舘春一『ハイキュー!!』第10巻・P162、163 集英社>

プライド以外に何が要るんだ!!!

この見開き、グッときますね。

正直泣きました。刺さったなあ…。

個人的に『ハイキュー!!』屈指の名場面、名台詞だと思います。

熱くなること、一生懸命になることを笑う奴ほどカッコ悪いヤツはいない。

そう常々思っている私でも、「じゃあ何のために頑張るのか」と問われれば、自分のためとは思っていても、これという単語は出て来なかった。

だからがつーんときましたね、山口の迫力とシンプルな言葉には。

これ以上に真理をついた台詞ってあるかな?と思うくらい。

プライドを持たない人間なんていないのに、プライドをバカにしたがるお子ちゃま(若いとは限らない)は、『ハイキュー!!』10巻で学んだらいいよね。

100点を目指す苦しさ

私は月島ほどクールな人間ではありませんし、努力に絶大な価値を見出せる機会に恵まれた幸運な人間ですが、山口の言葉が刺さるのは、やはり自分の努力不足というか「合格点とれればいい」スタイルに自覚があるからです。

死にもの狂いで頑張ったらできるかもなあ、と思えることでも、そこまでやらなくてもいいか、と手放してしまう。

そんな面に少なからぬ自己嫌悪を感じているのだと思います。

「器用貧乏」「何でも2番」と何度言われてきたか分からない私は、何かに突出していたり、ガムシャラに頑張れる人への引け目があるのかもしれません。

そこを抉られました。

90点でかっこつけちゃう自分を殴りたくなったこと、あるもんなあ。

ありがとう、山口。な巻でした。

ハイキュー10巻の気になるところ諸々

ところで第86話の表紙、マネージャーたち集合の図がめちゃくちゃ可愛くて楽しそうで、きゅんとくるんですけど!

そういえば私も他校のマネさんと友だちになって(私は中学・大学でプレーヤー、高校は男バレマネ)、練習試合や大会会場で話すのがすごく楽しみだったな~。

特に同じ公立の進学校で実力も近い高校とは、他の部活ではあまり仲がよろしくなかったそうですが、男バレだけはとても仲が良く。

キャプテン同士、マネ同士、セッター同士と同じ立場同士が特に仲良しだったのも面白かったです。

10巻では他にも、大好きな梟谷学園のレギュラーメンバーが出揃いました(猿杙と木葉の顔がだいぶちがいますが)。

「バレーボール楽しい?」と月島に聞き、「いや…特には…」と返ってくるや

それはさ へたくそだからじゃない?

と言い放っちゃう木兎光太郎の天然素直、きらいじゃない!

それと、「必死にやる理由」を月島に聞かれた木兎の答え。

<古舘春一『ハイキュー!!』第10巻・P174 集英社>

“その瞬間”が有るか、無いかだ

という台詞は今後へのいいフラグですね~!

まあこのフラグ回収のシーンもとっくに読んではいるのですが(何度も全巻を読んだうえで始めたブログ)。

私は古舘さんのフラグの立て方がかなり好きなようです。

最後に余談ですが、10巻のカバー裏コメントに古舘先生、

「最近自宅で怪奇現象が起こっているような気がします。引っ越しかなあ。」

と書いていらっしゃるのが気になって…。

その後、大丈夫なのでしょうか??

スポンサーリンク







フォローする